こんにちは。榊です。
留学へ行くことが決まりました。と人に伝えますと、まぁだいたい「どこへ行くの?」、「大学は休学するの?」、「就職どうするの?」などなど沢山質問されますよね。
聞かれた経験のある方もいれば、聞いた経験のある方もいらっしゃるかと思います。
さて、榊の場合ですとこれまた行き先がチェコという日本からあまり馴染みのない国です。
チェコに留学するんですよって話をするとみなさん基本的に
「チェコ!?え!?何語?チェコ語!!?!は!?チェコ語やってどうするの!!?」
って言ってきますね。
これ以外の反応は多分数えるくらいしかされてないと思います。
みなさん気になってしょうがないのか様々な人を相手に何十回と同じような受け答えをしてきました。笑
まぁ気になるよね。
ちょこっと今までの話を書いていきます。
記憶の中で一番最初のチェコ共和国
私の人生の中で、おそらく一番最初にチェコ共和国というものを具体的に認識したのは中学生だと思います。
まぁこれは結構一般的なんじゃないでしょうか。
みなさんも音楽の授業でやりましたよね?
ベドルジフ•スメタナ作曲
連作交響詩『わが祖国』の第2作『モルダウ』
モルダウ(Moldau)というのはドイツ語表記になるので、チェコ語の原題だとVltava(ヴルタヴァ)になります。
詳しく話すと多分記事一個分くらいになりそうなのでスメタナの話は割愛。
まぁ音楽の授業は普通にやり過ごし。
音楽の授業に加えて当時所属していた吹奏楽部がわりと大所帯で、そこそこ強い学校でした
この曲は定期演奏会で演奏することもあって結構思い入れ深いです。
他にも授業ではあまり重点的に取り扱わないこともありますが、交響曲第9番 ホ短調 作品95『新世界より』を作曲したことで有名なドヴォルザークもチェコの人ですね。
『新世界より』は日本での3大交響曲の一つにも数えられるほど有名です。
第4楽章の動画を貼っておきました。
絶っっっっっっっ対に皆さん聞いたことありますので、クラシック音楽全くわからん!という方も出だし20秒は聞いてください。笑
そんな曲たちを聞きながらイメージしていたのは決してチェコという国ではなく、ヨーロッパという大きな括り。
まさか自分がチェコへ留学へ行くなんてこのときは夢にも思いませんでした。
初めて海外へ行った高校1年のときも、チェコなんて選択肢に全くありませんでした。
母と二人で卒業祝いという名目のもと、スイスとリヒテンシュタインへ行きました。某漫画の影響受けまくりでしたね。(チェコはキャラクター化されていませんでしたしね)
お絵描き生活とミュシャ
高校時代は、吹奏楽部ではなく文芸部と新聞委員会の編集部、生徒会をやっていました。
なつかしい。
よくあんなにいろいろやっていたなと今では思うのですが、もともと小さい頃から絵を描いたり、本を読んだりするのが大好きだったので文芸部で小説を書きながら絵を描いて、新聞で記事を書いて、というのはなかなか楽しい日々でした。
Twitterを榊の名前で始めたのもこの頃ですね。
中学の頃よりも時間が取れるようになったので絵を描く時間も増えて、小学生の頃のように美術館や博物館に足を運ぶ機会も再び増え始めました。
歴史好きも相まっていろいろな画家について知りたいと思うのと共に、様々な絵を描きたいと、手当たり次第本やネットを漁っていたこの頃アルフォンス・ミュシャを見つけました。
チェコ語の発音だとアルフォンス・ムハになります。
昨年2017年には門外不出のムハの大作である『スラヴ叙事詩』が初めてチェコ国外へ持ち出され、東京の六本木にある国立新美術館で展示されたことは記憶に新しいかと思います。
細かな装飾ときらびやかな色づかい、なめらかな曲線をもって描かれる美しい女性たち。
一時期夢中で見ていました。
でも、まだこの時もチェコを強く認識はしていませんでした。遠い東欧の国。それだけ。
R.U.Rとの出会い
さて、大学1年の冬。
現役で滑り止めしか受からず、嫌々行きたくない大学に通いながら仮面浪人していた頃の話です。
もし浪人が成功したら、現在とっている単位の移行もできるらしい!とのことで、なるべく一般教養科目に重点を置きながら履修をしていました。
(まぁ結局そのままの大学で4年間過ごすのですが)
そこで履修していた自然・科学カテゴリの科目の一つ「技術論Ⅱ」。
石器時代から現代までながーい人類の歴史の中、繊維技術や冶金(やきん)技術、動力技術などの構造、歴史なんかを学ぶ科目でした。
冬休み直前の補講、世間がクリスマスムードの中、わざわざ5限のために学校に来るのは真面目に授業を聞く人ばかり。
人の少ない大講堂で18、19世紀の内容の講義を終え、最後に教授が紹介した一冊の本が、おそらく私をチェコへと導いた一番大きな要因だったのではないかと思います。
カレル・チャペックによる戯曲
『R.U.R. Rossumovi Univerzální Roboti』(ロボット ロッサム万能ロボット会社)
岩波新書から千野栄一先生の翻訳で出版されています。
簡単にあらすじを紹介すると、とある孤島、世界中のロボットの生産を一手に担う工場の一室が舞台になります。
人間の代わりにロボットが労働をする社会へと変わった世界で、ある日突然ロボットたちが反旗を翻し、人類を抹殺していく…というお話になります。(ネタバレにならないようにほんとざっくりです。)
戯曲で基本的に登場人物の台詞しかありませんので、読書が苦手な方でも読みやすいと思います。
気になった方は是非一度手に取ってみてください。
この作品の作者チャペックとその兄のヨゼフによって、人間が作り出した労働をするための人間にロボットという名前がつけられ、この『R.U.R』によってその言葉が世界中へ広がっていきました。
こちらは1920年に発表された作品ですので、約100年前の作品です。
私たちの仕事がロボットに取って代わっていくのではないか、と話題になる今よりもずっとずっと昔に、同じような未来がくる想像をしていたと思うと胸が熱くなりますね。
今でこそやり尽くされたようなSFの設定ですが、まさかこんな偶然原点に出会えるとは思いませんでした。
榊は別段SFが好きなわけでも、ロボット好きな理系学生というわけでもありませんが、ドハマりしました。
冬休みで10周くらいしました。笑
経済ゼミへの加入とヨーロッパ旅行
『R.U.R』に出会ってから約半年後、ゼミ選考の時期です。
榊のいる経済学部では2年生の後期から経済ゼミが始まるため、2年の前期が選考期間でした。
ゼミ選考は分厚い要項が書かれた冊子を受け取って、それを参考に数十とある研究室の中から自分の所属したいゼミを選び、説明会に行き、申し込み、面接を受け、落ちたらまた二次選考……。とまぁめちゃくちゃめんどいです。
そして正直そんなに経済やりたくない。笑
さらに、大学を受け直すつもりだったためろくに友達を作っていない。
サークルとかいうものに見学に行ったことすらない。
大学内は数人の知り合いと、仲のいい他学部の先輩だったTwitterのフォロワーさん。
いや、これでゼミ入っても、既に仲良しグループあってキャッキャしたキラキラ女子大生に微妙な距離で接されたら、もうマジで大学来たくなくなって引きこもりそうじゃん。って思考が真っ先に働きました。やばい。
キラキラ女子大生の集団が怖いんです。だめ。
「あの子ノリ悪いよね〜てかダサいwww」とか思われてそうで、キモヲタのヲタ成分が薄まってキモしか残っていない古のヲタクにはしんどいです。自意識過剰です。すいません。
まぁそんなことは置いておきまして、前から順番に冊子を読んでいくと2番目?3番目?に載っていたゼミ。
なんと「ゼミは仲良しグループを作る場ではありません。友達同士で連れ立ってこないように。」と書かれていたんです。
これは!!!!!!!!!!!
キタ!!!!!!!!!!!!
と思って早速説明会へ。
歓迎する学生の内容も、ラーメン屋に並びたくない人、流行に飛びつかない人、出身や肩書きをひけらかす人を笑える人、むやみに威張ったり卑屈になったりしない人、ほほえみのすてきなひとを歓迎しますとか書いてありました。謎すぎる。
課題のレポートを提出して、面接(と言うより研究室に集められてみんなでお話)をして、そのままじゃあ最初のゼミとしていついつの昼に集まってねと。いや簡単。
結局ゼミ要項の冊子は五分の一くらいしか読んでません。後ろのゼミとか先生の名前も知らん。
そんな謎ゼミに入ったのですが、先生はなんと経済学部の教授でありながらカレル・チャペックのことも研究されている方でした。びっくり。
そして、ほぼ毎年ゼミの2年生で希望制のヨーロッパ旅行をしているとのことで、榊も手をあげました。
行き先はドイツ、チェコ、ハンガリー、ポーランド。
一番の目的としては、ポーランドのクラクフにあるアウシュヴィッツ強制収容所の見学。
こちらに先生の知り合いの日本人の方が職員でいらっしゃって、ガイドをしているとのことで、いつもここを目的にゼミ生の旅行を計画するそうです。
基本的に先生の知り合いの方や、昔のゼミ生の方々にお会いしに各国をまわって見聞を広める、というものでした。
大学2年生、19歳の夏。
初めてチェコへ足を踏み入れて、今まで自分の中に知識として存在したものが新たに経験として、再び自分の中に落とし込まれていくような素敵な感覚でした。
この旅でチェコに滞在したのは3、4日ほどですが、その間にここに住みたいという気持ちが大きくなり、最終的にここまで来てしまいました。
留学の決め手
留学の決め手は何と言っても、ここに住んでみたい!っていう気持ちじゃないですかね。
まさに百聞は一見に如かず。
いろいろな面からチェコという国をバラバラに認識していたものが、実際に自分の足でその土地を歩いて、五感すべてでその街の空気を感じたことによって、いままでの認識が一つの実体験として重なり、合わさったような感覚。
きっと街に、空気に、その国の持つ雰囲気に惚れたんだと思います。
それからもう一つは、原語で『R.U.R』を読みたい!ですかね。
やはり好きになった作品は元の文で読みたいんです。
小学生の頃、青い鳥文庫の小説版『あさきゆめみし』から源氏物語にはまり、大和和紀先生の漫画を読み、現代語訳を読み、中学高校で古典原文まで読みだした昔の自分を思い出しました。
訳されたものではなく、原文で、書いたその人の息遣いを感じ取りたいんです。
ひとつひとつの言葉を選んだ、その背景を想像しながら読むのがいいんです。
きっと本好きのそこのあなたならわかってくれると思います。
そんなふうに、いつか留学でもなんでもいいからここに住む日が来たらいいな、チェコ語で『R.U.R』を読めたら素敵だな、そううっすら思い始めたことが今につながっているかと思います。
人生何があるかわからないものですね。
ちなみに榊はめちゃくちゃ英語苦手です。
英語できないくせによくチェコ語やろうと思ったよなって自分でもよく思います。
なんとかなるといいなぁ。笑
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